背景
1971年の事業検討当時、多くの国で地下鉄が導入されていました。クリチバでも地下鉄の導入が検討に上がったものの、予算的に難しい状況でした。一方で、従来型のバスでは市民の移動需要には耐えられなくなっていました。
そこで、当時のジャイメ・レルネル市長(建築デザイナー)により、地下鉄のコンセプトを一部バスに適用させるアイデアが実現され、世界に先駆けて1974年にバス専用道路システムが運行を開始しました(BRTと呼ばれるようになったのは1996年以降)。
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実施内容
クリチバ市のBRTは以下の条件を備え、速達性、定時性、輸送力確保を実現しています。
- 世界で初めて縁石で区切られたバス専用の走行空間を整備した
- 世界で初めて高床バス駅を導入し、事前運賃収受、わたり板によるスムーズな乗降を導入し、停車時間短縮を実現した。
また、開発軸の断面にも工夫があります。中心のBRT専用レーンの脇の一般2車線は、歩行者や自転車利用者が多く存在することを想定しているため、制限時速30kmまたは40kmの低速レーンとなっています。都市公社URBSが、路線、車両設計、車両塗装を管理し、路線役割ス毎に車体が色分けされていることも特徴です。これにより、利用者は路線ネットワークを活用した乗継利用が、用意にできるようになっています。


歩行者のための事業が並行して進められていることも大きな特徴です。ブラジルで最初の歩行者専用道路と言われる「お花通り」をはじめ、近年では、「コンプリート・ストリート」というプロジェクトにより、歩行者空間の整備を進めています。歩道の拡張と合わせ、車両のスピードを押さえる舗装を採用する等、歩行者優先のための工夫が施されています。
バスシステムの近年の取組みとして、①東西幹線の改善事業、②Inter2線の改善事業があげられます。
- 東西幹線の改善事業では、速度向上のために、バス停周りの追い越し車線の整備、バス優先信号の整備、ターミナル及びバス停の停車スペースの増加、幹線道路の舗装の耐久性の向上に取り組んでいます。
- Inter2(ダウンタウンの外周を運行する環状快速路線)では、象徴的なチューブ型のデザインではなく、直線的なデザインの新駅が整備されています。空調が完備されており、駅の周辺には電気自動車用の充電設備もあります。また、シェアサイクルステーションも併設されています。
ブラジルで最初の歩行者専用道路といわれる「お花通り」、(右)車両速度をおさえる舗装を導入した近年の取組み-1024x533.png)
歩道の拡張とともに、車両のスピードをおさえる舗装が採用されている

ポイント
- 運行開始より50年が経過したシステムですが、近年、バス利用者の減少という多くの都市に共通する課題にも直面しています。
- 利用状況に基づき、、ネットワークは継続的に見直されています。
- また、定時性の向上・運行効率化に資する様々な取組みが行われています。例えば、東西幹線ではバス優先信号が整備されている他、Inter2線の一般道路走行部分においてもバスレーンや優先信号制御が導入されています。
- バッテリーとバイオディーゼルを併用したハイブリッドバスは2012年から導入され、緑色の地区間環状路線と黄色の従来路線で運行しています。
- 100%電気を動力とする電気バスは昨年から導入しています。2025年は市内のバスのコンセッション契約が契約期限を迎える節目の年でもあり、電動化に向けた動きは今後も進むものと思われます。一方で、3連節の電気バスは存在せず、調達する場合は2連節となりますが、輸送力が下がってしまうという課題があるそうです。また、現在主に使用されている車両は高床式ですが、バリアフリーの観点からも低床式の重要性が増していく中、低床式バスの実装の可能性について検証していく必要がある、とのことです。
- 支線バスや環状路線については、すでに数年前から現金支払いを廃止しており、IC・クレジットカード決済が主流となっています。人件費削減の意図の他、セキュリティ(無賃乗車の防止)の観点からも、メリットが大きく、市民への広報についても、キャッシュレスを推奨していると担当者は言います。新規に導入された電気バスでも、現金での料金収受が完全に廃止されていました。
- 柔軟な施策展開を続けているクリチバ市BRTですが、市の周辺地域との施策連携には課題があるそうです。クリチバ市の周辺は州政府により予算が管轄されており、予算不足によりクリチバ市からの提案が実現しないこともあります。
- ただ、合意形成の面では、プロジェクトのアイデア段階から他地域の関係者も含めコミュニケーションする、マスタープラン改定時にクリチバ都市圏の全ての首長を招待し意見交換する、などの工夫を行っており、「一旦予算が付けば、事業の推進はスムーズである」と担当者は語っています。


