背景
クリチバ市はブラジル国南部に位置し、人口180万人(南部では最大)の地方主要都市です。1966年のマスタープランから道路網・建築規制誘導・バスシステムをふまえた「開発軸」戦略が提唱されました。この開発軸の整備の他、都市デザイン全般を主導した組織が、市の機関であるIPPUC(都市計画研究所)です。IPPUCの一部署であるIPPUC Urban Hypervisor(以下、ハイパーバイザー)は、ビッグデータの活用・処理に特化した専門部署です。社会情勢として、適切に情報を入手し活用する能力の重要性が高まっていたことを背景に、フランスの援助機関による融資を活用して、2017年に立ち上げられました。
実施内容
ハイパーバイザーで実施している事業分野には、AIに関する国際連携、デジタルチケッティング(スウェーデンや国内の大学と連携して進めている)、ヘルスセキュリティシステム、GISプラットフォーム、BIM、CIM等が含まれます。
中でも、最も重要な取組みの一つが「GEOCURITIBA 」というデジタルツインの構築です。3Dマップをベースとし、ゾーニング/高さ/用途などのデータが紐づけられており、シミュレーションが可能となっています。デジタルツインは過去の市街地地図の変遷(1857年、1952年、1972年)の他、1995年の航空写真がデータベースに落とし込まれており、現状のバス路線情報等の公共交通データも掲載されています。

ポイント
- デジタルツインの整備と更新において、データの収集に係るコストは、大きな課題の一つだと担当者は言います。
- 伝統的な航空写真を3Dモデルに落とす作業には大規模な投資をつぎ込む必要がありましたが、この初期投資は避けられないものと割り切ったとのことです。ただし、大規模なモデルの構築作業はこの1回限りとし、その先10年程度は、更新作業に留めることでコストを削減したいと考えているそうです。
- 収集分析したデータを様々な政策決定に活用しているハイパーバイザーですが、市民とのコミュニケーションを徹底しているという点がポイントです。
- クリチバには「156」というコミュニケーションツールがあり、市民からの意見や要望、問い合わせを受け付けています。1983年に開設され、古くは電話のみでしたが、現在はWEBやアプリを通じたチャットも活用されており、問い合わせ件数は年間120万件にのぼります。
- 全ての要望や意見に対応することが義務化されており、ハイパーバイザーは24時間体制でこのコールセンターの対応を担っています。利用者は対応を評価でき、満足度は95%以上とのことです。
- 元々、クリチバ市では、都市計画の重要な決定事項や毎年の予算計画については、市民への意見照会や公聴会の実施が義務化されています。市民参加を行わなければ、罰金やペナルティが課せられるとのことです。
- こうした市民の徹底的なコミュニケーションが、人間中心のスマートシティ戦略の素地になっていることが伺えます。


【資料・参考情報】
①GEOCURITIBA(ハイパーバイザー)
https://geocuritiba.ippuc.org.br/portal/apps/sites/#/geocuritiba
②156(クリチバ市)
https://156.curitiba.pr.gov.br
