背景
マンチェスター郊外の多くの街では、街の中心部にバスターミナルが設置されています。これらのバスターミナルは近年、統一された開放的なデザインのターミナルにリニューアルされているほか、一部のバスターミナル周辺では大規模な再開発も行われています。
バスターミナルの周辺には商業施設や公共施設が立地していることから、バスターミナルの再生は公共交通の機能強化にとどまらず、商業・公共施設も含めたまち全体の機能のアップデートにつながっています。また、マンチェスターの中心部と郊外のバスターミナルを結ぶ路線や、郊外バスターミナル同士を結ぶ路線は、Bee Networkへの統合以降サービスレベルを向上させており、日中でも12分以下という高頻度で運行されています。

実施内容
マンチェスター郊外の多くの街に、Bus StationあるいはInterchangeと呼ばれるバスターミナルが設置されています。一部はトラムの停留所の隣に立地しており、トラムとバスのシームレスな乗換が可能であるほか、一部の結節点ではシェアモビリティやショップモビリティ1も整備されています。これらのバスターミナルはまだ地価が安かった時代に、中心部の開発と併せて設置されたものが多く、結節点を中心にまちが形成されています。中には、公共施設の移転で空いた、より便利な土地に移転した例もあります。
近年では、バスターミナルのリニューアルも進められています。マンチェスター南部のStockportでは、2024年に住宅再開発とセットで新しいバスターミナルが建設されました。1億4000万ポンドが投じられた新しいバスターミナルは2層建てで、下層には19のバスバースと待合所、チケット売り場、売店があり、上層には鉄道駅や川沿いに接続する歩行空間と高層住宅のエントランスがあります。2025年6月には、トラムの乗り入れ計画が発表されました。

リニューアルされたStockport Interchangeは、広い待合空間を備えたバスターミナルと住宅開発が行われたほか、上層部に整備された歩行空間ではイベントも開催され、出会いの空間が広がっている(出典①)



それ以外のバスターミナルについても、シンボリックな外観と、外の光を多く取り入れるガラス張りの構造で統一された建物へとリニューアルされています。こうした街では民間主導での中心市街地再編が進まないことから、行政主導による再編が計画されています。
また、郊外バスターミナルとマンチェスター中心部、あるいは郊外バスターミナル同士を結ぶバスネットワークについて、Bee Networkへの統合以降、路線再編によりサービスレベルが向上しています。現在では、41の路線が日中でも12分以下の高頻度で運行されており、市域全体で利便性の高い公共交通ネットワークが形成されています。バスターミナルには、高頻度で運行する路線を一覧にしたマップも掲示されており、郊外都市間にも利便性の高い公共交通が運行されていることがPRされています。
運行頻度12分以内のトラム・バス路線を示したネットワークは、都市圏全体に広がる郊外拠点への放射方向だけでなく、郊外拠点同士を結ぶ環状方向にも広がっている


ポイント
- バスターミナルを中心に街が形成されていることで、行政、医療、買物などの日常生活に不可欠な機能に、公共交通でアクセスしやすい環境が構築されています。
- また、バスターミナルの外観はシンボリックなデザインとし、かつBee Networkの黄色いミツバチのサインが大きく掲示されています。これにより、バスターミナルであることが一目でわかるようになっています。
- Stockport Interchangeの再開発にあたり、地元行政は鉄道・バス・アクティブモビリティといった環境にやさしい多様な交通を選択できるように集約すること、また新しい住宅やイベントスペースとして活用できる緑地空間を供給し、アクティビティの中心とすることを目指しました。それだけでなく、行政は政府の支援も得ながら多くの投資を行い、金銭面でも積極的に関与しました。
- 中心部と郊外拠点、また郊外拠点同士を結ぶバスは、待たずに乗れる水準の高頻度で運行しており、郊外から中心部へのおでかけだけでなく、郊外のほかの街へおでかけする際にも公共交通を利用しやすい環境が整っています。
Stockport Interchangeには24系統が接続し、時刻表は系統毎にQR確認(左)と紙版(右)で誰も取り残さない工夫がされている(出典①)


【資料・参考情報】
①IBS撮影
②Greater Manchester’s new bus network - with £1.50 ‘hopper fares’, 70-minute routes and a re-think on evening and Sunday services(2021.10.28 Manchester Evening News)
③New Bee Network map reveals high frequency bus and tram routes together for the first (2025.3.15 TfGM)
④Greater Manchester Transport Strategy 2040(2021.1 TfGM)
- ショッピングセンターを拠点に活動する慈善活動団体が主体となって運用される、電動車いすや小型スクーター等の、高齢者・障がい者向けの移動手段 ↩︎
