背景
ドイツでは、2022年に国主導で道路交通データ基盤(MDM)と公共交通のオープンデータポータル(mCLOUD)を統合し、動的データの共有・API連携を可能にする新しいプラットフォーム、モビリティ・データスペース(MDS)の運用を開始しています。
このような流れの中、ハンブルク市では、モビリティを単なる移動手段ではなく、都市そのものを動かす基盤として位置付け、この動きをデータで捉え、都市経営に活かす戦略的意図から、独自のモビリティデータ基盤の構築を進めています。
実施内容
ハンブルク市では、包括的な交通改革戦略ハンブルク・タクトに基づき、個人の自動車依存から脱却し、自転車・公共交通・シェアリングへの移行を促すため、都市計画から交通ネットワークの設計、モビリティ・サービスのニーズ把握や改善まで、すべてをデータドリブンで支える方針を明確に打ち出し、システム設計等の様々なデジタル戦略に活用可能な統一のデータ基盤の構築を進めています。この中核となるのが、HVV(交通連合)が主導で整備している市内の企業情報や渋滞、公共交通、天気等の基礎データを蓄積している統一プラッフォームです。
交通事業者には行政へのデータ提供を義務付け、連携する民間の交通事業者に対しては、単なる協力要請ではなく、安全なデータプラットフォームを構築した上で、「このデータがあなたのサービス改善と収益向上につながる」という視点から丁寧な対話を重ね、データの提供に繋げています。
統一プラットフォームに蓄積されたデータは、ハンブルク市の都市交通計画やインフラ整備の意思決定へと活用されるとともに、ドイツ連邦によるMDSとも接続され、地域で蓄積されたデータが、全国レベル・EU全体の移動最適化にも重要な役割を果たすことが期待されています。

ポイント
- ハンブルク市が構築する地域のモビリティ・データスペースでは、リアルタイムの公共交通情報だけでなく、天気や道路の混雑状況、環境センサーのデータまでが統合され、市民や事業者が自由に使えるようにすることで、このデータをもとに、新しいサービスを生み出し、さらにデータが蓄積される循環が生み出されています。
- ポイントとなるのは、この循環の原動力となる、データを共有するための基盤とルールを、包括的な交通戦略に基づき行政が主導している点にあります。
- 移動に関する様々なデータを集めるだけではなく、例えば、路線バスの遅延状況、駅周辺の混雑度、シェアサイクルの稼働率などをまとめて見える化する。すなわちデータを繋ぐためのプラットフォームを作るためには、様々な価値観を持つ主体に対して、行政が共感を生む明確なヴィジョンを示し、リーダーシップをとることが重要になります。
- そのためには、官民の信頼に基づくデータ共有ルールが不可欠です。交通事業者や民間のモビリティサービス、配車サービスといったプレイヤーが安心してデータを行政に預けられるよう、利用目的や利用可能な範囲を明確にする等、 信頼の枠組みを軸に、分散型で権利を尊重したデータ活用が進められていることも、見逃せないポイントです。
【資料・参考情報】
①Metropol-Modellregion Mobilität Hamburg(Hunburg Hochbahn、2023年11月)