東京大学大学院 新領域創成科学研究科 特任教授 中村 文彦
自転車・バイク・自動車駐車場 パーキングプレス 2022 11月号
モビリティをデザインするアプローチ 第63回より
1.はじめに
前回および前々回で2回にわけてBRTを取り上げた。前回は、国土交通省社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会の公開資料に基づいてBRTの課題を整理した。その後、9月にBRTのガイドラインが公表された1。
ガイドラインでは、連節バスはBRTの一形態として位置づけられている。前回の記事で書いたように、筆者は、連節バスをBRTとして位置づけることは適切ではないと考える立場である。加えて、これも前回にも書いたように、連節バス自体を否定する立場ではない。
今回は、この文脈に基づいて、連節バスの意義や可能性をまとめておく。
2.連節バスの定義
連結、連接という単語と区別して連節という単語を用いているのには理由がある。交通ジャーナリストの鈴木文彦氏によると、ナンバープレートのつけ方がポイントのようである。現在でもスイスのローザンヌ等にある連結バスは、運転席と動力源のある車両と、連結されている車両は、別々のナンバープレートをつけている。鉄道でみられる連接車両による編成では、個々の車両は別々に登録されている。連節バスでは、構造的には2つの車両が蛇腹のようなものでつながっているものの、ナンバープレートは1つ(前後で一対)である。すなわち、1つの登録された車両の中に節があるとみなすことができる。以上の経緯を経て、従前はいろいろな表現が用いられていた連節バスは、「連節」に統一されるようになった。英語では、articulated busと呼ばれる。このarticulateには関節で区分するような意味合いがある。
ブラジルのクリチバ市等でみられる3車体がつながっている車両もナンバープレートは1つ(一対)であり、1つの車両として登録されている。英語では、bi-articulated busと表現されているので、適切な訳語は、重連節バスになる。
筆者らの書籍2などでは、3車体であることに由来して、三連節バスと称しているが、英語からの訳という点では適切ではないといえる。
3.連節バスの輸送力
連節バスの特徴点のひとつとして高い輸送力が指摘されることが多い。本連載で何回となく触れているが、輸送力という言葉には十分な注意が必要である。路線の輸送力について整理する(図1)。

<輸送力の基本の再整理>
連節バスの一両の定員が多いことから連節バスの輸送力を単純に評価している資料もあるようだが、図1に示すように、路線単位で考える場合、車両定員と運行本数をかけあわせて輸送力が決まる。
<一車両としての輸送力>
一車両としての輸送力は、車両定員によって決まってくる。そもそも車両定員は、車内の座席数と立ち席スペースで決まる。立ち席スペースの考え方によって同じ寸法の車両でも定員は変化する。クリチバの三連節バスの一部車種は、ブラジルでの法律の運用が変化したことにより定員が減った。新型車種登場当初は280人といっていたものが、ある時から250人に変更になっている。
さらにそもそもの問題として、乗用車のすべての乗員にシートベルト着用を義務化して久しい現代日本において、なぜバスは立ち席を認めたままなのか、安全性の観点からいえば本来は不合理である。ましてや、高齢者の利用が多く、今後も高齢者利用の増加が想定される中で、全員着席を前提としないままでよいのか、十分な再検討が必要である。
話を戻すが、連節バス(日本では車長約18m)は、通常のバス(車長約10~11m)に比べて、一車両の定員がおよそ2倍ほどある。
<運行本数の最大値>
そして、運行本数の最大値は、いちばんクリティカルになる途中駅で全員(=車両定員)が降車して全員が乗車する場合の1両あたりの停車時間によって規定される。停車時間が長くなると、運行本数が減少する。安全率等を無視して単純に計算すると、1台の停車時間が2分なら1時間に30便となり、1台の停車時間が1分30秒になれば、1時間に40便になる。
<ドア数と運賃収受>
この停車時間に影響するのが、図中に白抜き文字で示した要素である。連節バスに何か所のドアがあって、乗車および降車にいくつのドアを用いるか、運賃収受をどのように行うか、そこでICカード利用をどの程度に想定するか、これらが大きな鍵となる。ICカード利用が韓国のソウルのように99%を超え、広島の連接路面電車のように全扉乗降を実施すると停車時間はかなり短縮できる。
4.路線の輸送力の費用効率
本連載で過去にも触れているが、理論的には、どの輸送システムでも、空間や費用の制約がなければ輸送力は無限大である。片側10車線のバス専用道路で15秒間隔の連節バス運行をすれば、1時間あたり36万人を運べる。この場合、相当の土地と車両と運転士が必要になる。これらの要素は費用に換算できる。そこで、例えば1時間あたり3万人輸送するのに、各輸送手段でいくらかかるのかを計算し、最も安価なシステムを選択することが合理的である。この計算のためには、1人を運ぶのにかかる費用の算出が求められる。本稿では、そのような尺度を輸送力の費用効率と称して整理した。計算の考え方を図2に示す。

図のように、費用を輸送力で除すことで費用効率を得る。輸送力のうち車両台数と運転士数については、路線の一往復に必要な台数と人数で決まる。台数と人数は、運ぶ人数と車両定員と速度で決まる。車両定員の多い連節バスの価値はここに現れる。連節バスの1両の定員は、通常のバスの約2倍であり、その効果は大きい。速達性については、例えば路線長5kmの路線の場合、表定時速15kmであれば片道20分、表定時速20kmになると片道15分になる。終点での折り返し時間を5分とすると、5分間隔の運行に必要な台数は、前者の場合は10両、後者の場合は8両になる。表定時速の向上によって必要両数は節約できる。いわゆるBRTにおいて、速達性を上げることの意味もここに現れる。
5.輸送力以外の視点
2005年以降、外国製のノンステップの連節バスの導入が進み始めた。多くの事例で、利用者からの評判がよい。
以前に実施した試乗会で市民参加者にアンケートを行い、車両の評価をしていただいたことがある。ドイツ製のバス車両への評価はすこぶる高いが、その理由については、窓の大きさ、椅子のデザイン、その他、車内の椅子やつかまり棒などのデザインや塗色、車内の広告物や掲示物の量、外観の塗色、車内が平らであること、乗降がしやすいことが挙げられた。連節であることを評価している市民は一人もいなかった。
間接的には、連節バスのほうがバス停での積み残しが発生するリスクが少ない等を指摘できるが、市民からみて連節バスが連節であることはそれほど評価されない。むしろ、比較対象となる国産のバス車両と比べた場合、デザインの違いが連節バスの好印象の大きな要因になり得ていると理解するのが適切といえる。
フランスのストラスブールやナンシーのように、路線バス車両の内装に建築デザイナーを起用することや、メッスのように建築デザイナーのスケッチをもとにした車両メーカー国際コンペを行うことまではせずとも、路線バス車両一般の内装には改善点が多いこと、連節バスの輸入によって、そのような点が明らかになったことの意味は大きい。一方で、今後増加していく、国産の連節バスでの内装の設計や掲示物等車内の使い方には十分な留意が必要ともいえる。
6.おわりに
以上に述べたように、連節バスは、大きく2つの優位性がある。まず、車両単体としての定員が大きいことが特徴で、結果的に、路線の輸送力の費用効率という点で高い優位性があること、そして、デザインに優れた輸入車の場合に、そのデザインが市民に高く評価され得ること、の2点である。ここに運賃収受や速達性向上方策等もかかわってくる。これらの点や車内の課題を十分に尊重し、車両長が18mと長いため、交差点やバス停等の改良が必要なことを踏まえ、連節バスを有効に活用することが期待される。
- https://www.mlit.go.jp/road/brt/pdf/all.pdf ↩︎
- 中村文彦、牧村和彦、外山友里絵『バスがまちを変えていく-BRTの導入計画作法-』、IBS 出版、2016 ↩︎
