背景
現在、ライドシェア1は全米の多くの都市で普及していますが、都市内の道路を多くの車両が走行することによる、渋滞の悪化、普及による公共交通などの利用減少が大きな問題となっています。
こうした問題を解決するべく、ライドシェアが州ごとに合法化された2014年以降、全米各州・郡・都市の行政機関では、車両の増加に対する混雑緩和などの目的で、ライドシェアに対する課税を行うかどうかが議論・検討されています。2025年1月に開催されたTRB Annual Meetingでは、米国におけるライドシェアに対する課税措置についての研究発表が行われ、活発な議論が繰り広げられました。

実施内容
米国でRide hailing tax(以下、RHT)と呼ばれる、ライドシェアに対する課税措置は、2014年以降、全米の51の州または都市で導入されてきています。RHTの導入目的は都市により様々ですが、政府の税収増加を目的としたものだけでなく、道路混雑緩和のためにライドシェアの需要抑制を目的としたもの、あるいは乗合利用を推奨するためのものがあります。シカゴの例(右図)のように、使途の異なる複数の税制措置が課されている都市も多くあります。RHTを導入している州や都市では、得られた税収を公共交通機関や福祉輸送サービス、道路インフラの維持管理への投資、あるいは環境配慮型車両の導入促進など、大気汚染を防止する取組の財源として活用しています。
一方この研究では、RHTの多くが$0.50未満と少額であり、州や自治体が得られる税収もわずかであること、また道路交通の数パーセントしかないライドシェアがわずかに減少しても、交通渋滞への影響は大きくないことを踏まえ、税の役割自体についても再考するよう提言しています。

課税措置の例(出展①)
ポイント
- 米国の行政機関では、ライドシェア等の新しいモビリティサービスについても、そのサービスが都市が将来目指す姿の実現に対してどのように貢献するかが今もなお活発に議論されています。
- その結果として、交通渋滞の悪化など、都市にとって望ましくない方向の変化を加速させると想定される場合には、課税措置といった形で、行政が供給量をコントロールし、その収入を公共交通機関などの財源としても活用している点もポイントです。
【資料・参考情報】
①Lewis J. Lehe et.al., Taxation of ridehailing in the United States (Transport Policy Volume 162, March 2025, Pages 336-352)
- 本項の「ライドシェア」は、米国で「ライドヘイリング」と呼ばれる、自家用車を用いて旅客を有償で個別運送するサービスを指し、車両とドライバー、乗客をデジタルでマッチングするプラットフォームビジネスが該当します。 ↩︎